フランク・ボセージ『第七天国』(1927)@アテネフランセ文化センター

第七天国』を観る前日、諸事情から大ヒットした韓国映画私の頭の中の消しゴム』を観た。この韓流映画、物語については今更語るまでもないだろうが、とにかく、恋人の二人が抱き合っているか、キスしているか、「サランヘヨ(愛してる)」と言っているか、あるいはその全てかで構成されるシーンが約五分置きに続くのだ!ある意味驚愕せざるおえない映画だったわけだが、言うまでもなく全く感動しなかった。それに比べて、この『第七天国』の美しさ、感動といったらどうだ!どこかの映画批評家の方ならば、垂直運動と平行運動が交差する映画だとでも言いそうなこの映画だが、僕はもっと直接的な物語部分に感動した。中でも秀逸なのは、成り行きで夫婦のふりをしていた男と女が、本当の愛に目覚め、ついに男が結婚を申し込むぞというシーン。不器用な男はウェディングドレスを女に渡し、それで結婚の申し込みとするが、女は「一度も愛してるといっていないのに結婚するの?」というのだ。もちろんこの映画はサイレント。観ている僕らには物理的にも声は届くことはない。結局その時、男は「愛してる」とは言わなかったのだが、その直後、戦争で二人が離れ離れになるとわかった時、男は遂に、まるで口を滑らしたかのように「愛してる」と言うのだ。その瞬間僕は号泣してしまった。無声映画が語ったこの愛の告白がこれほど感動的だというのに、音がないことが信じられないというような現代の映画が五分ごとに「サランヘヨ、サランヘヨ」とつぶやいているとはなにごとか。もちろんこれは韓国映画だけでなく、最近の日本映画にも言えることなのだが・・・。(田村)