映画

マーク・バランスキー『ペネロピ』@テアトルタイムズスクエア

クリスティナ・リッチが豚鼻の女の子を演じる。彼女の大ファンとしてはなんとも気が乗らない映画ではあったが、そこはファンの宿命、いそいそと映画館に駆けつけてしまう。この手の映画は過去に多く作られていて(最近だとファレリー兄弟の『愛しのローズマリ…

甲斐田祐輔『砂の影』@ユーロスペース

久々に426クロニクルに書いてみようと思う。好き嫌いの主観的な判断は差し引いて、見たほうがいい(かも)と思える映画を紹介してみようかと。 * * *映画が「反転」するとはどういうことだろう。 物理的な方法としては、画面の上下が逆さに入れ替わることも…

井口奈巳『人のセックスを笑うな』@シネセゾン渋谷

『犬猫』を見て以来ひそかにファンになっていた井口奈巳監督最新作をようやく観た。ようやくというのは、この映画の異常な混雑状況にも起因するのであって、本当にこの映画はお客が入っている(僕が観たのは公開から一週間ぐらいたった月曜日であったのに最終…

横浜聡子『ジャーマン+雨』(2006)@ユーロスペース

著名映画人等の絶賛や、ぴあに取り上げられるなどして話題になっているこの映画。キャッチフレーズは「内向しない日本映画」だそうだ。僕は自分でも常々思っているし他人からもよく「きみは内向的だ」と言われるのだが、いざ「内向」というものを説明しよう…

ジェイムズ・ガン『スリザー』(2006)@シアターN渋谷

ロメロの『ゾンビ』のリメイクである『ドーン・オブ・ザ・デッド』の脚本家が初監督して作られたのがこの『スリザー』だ。アメリカのとある田舎町になんの前触れもなく飛来してきた謎の物体Xによって、ヒロインの亭主はエイリアンに変貌してしまう。そして…

ジム・ソンゼロ『パルス』@シアターN渋谷

2001年の9月11日のアメリカ、ニューヨークでなにが起こったかは今更記述するまでもないだろうが、実はその数日前、隣国カナダ、トロントにてその事件に酷似したシーンが存在する映画が上映されていた。黒沢清の『回路』である。映画終盤、飛行機が建物に突っ…

フランシス・ローレンス『アイ・アム・レジェンド』@ワーナーマイカルシネマズみなとみらい

まだ僕が中学生ぐらいだったころに「リドリー・スコット監督、シュワルツネッガー主演でSF映画が撮られる予定」という情報が出回っていたことがあった。当時の僕は『ブレードランナー』によってリドリー・スコット信者となっており、この小さな情報に狂喜し…

冨永昌敬『コンナオトナノオンナノコ』(2007)@池袋シネマ・ロサ

おそらく冨永昌敬にとって物語を完璧な形で映画に昇華させることなど、何の意味もないのだろう。そんな信条をもった人間が、それでもどうにか物語を語ろうとする格闘の様子がどのシーンからも伝わってくる。それは時に痛ましく思えてしまうことさえあるが、…

デヴィッド・リンチ『ロスト・ハイウェイ』(1997)@イメージフォーラム

僕もリンチのファンだっただけに最新作『インランド・エンパイア』(06)には、本当に幻滅した。どうせならこんな駄作を撮らずに死んでくれたほうがマシだった、とファンとしてあるまじき不謹慎な考えすら浮かんでしまうほどだ。しかし、一方でリンチのよう…

万田邦敏『接吻』(2007)@有楽町朝日ホール

住宅街へと続く階段をのぼる男はぐったりと頭を垂らし、ジーンズのポケットからは金槌の柄が飛び出している。男はこれから人を殺しにいくのだ。人を殺すことに理由がある必要はない。しかし、男には人を殺す必要があったのだ。 黙秘をつづけ死刑宣告を待つ坂…

パスカル・フェラン『レディ・チャタレー』(2006)@シネマライズ

下半身の自由が利かない夫を持つチャタレー夫人の、息がつまりそうな日常生活。どれよりも優先してまず書いておきたいのは、序盤に映し出されるそういった何気ない描写がゆっくりとこの作品の映画的土壌を形成していくのを、自分の背筋にくる震えと共に確か…

ガス・ヴァン・サント『マラノーチェ』(1985)@シネマライズ渋谷 

「Mala Noche」の意味はスペイン語で「最悪の夜」。しかし何とも寝苦しい8月の東京の夜々に、このすばらしい作品が毎晩上映されているというのはちょっと素敵なことではないだろうか。ガス・ヴァン・サントのこの処女長編には確かに彼の後の作品に通じる要素…

山下敦弘『天然コケッコー』(2007)@シネアミューズ

上映時間がちと長い……でもその分この映画には季節があるし、主人公にとって愛おしくてたまらない時間の流れというものが確かに描かれている。そしてたとえば『腑抜けども〜』のように田舎で生きることの息苦しさを暴く作品がある一方で、この作品における田…

青山真治『サッド・ヴァケイション』(2007)@試写会

『Helpless』『ユリイカ』の続編。この二作品を過去とする浅野忠信と宮崎あおいが出会う今回の映画は、以前とはいささか違う試みがされているし、もちろんそれらの作品と比べて見劣りするなどということは決してない。物語の主な舞台となる「間宮運送」が位…

ジョニー・トー『エレクション』(2005)@新宿ケイズシネマ

この映画の評判を聞きつけたときには公開がすでに終わっていたので、今回の中国映画特集でジョニー・トーのほかの作品と一緒に観ることができるのはうれしい限り。『マッスルモンク』のようなコメディー(?)を撮れる一方で、この映画のように闇社会の男た…

ジュリアン・テンプル『glastonbury』@渋谷Q-AXシネマ

結構前に見たのだが、いまでも僕の網膜にはスクリーンに映し出されていた狂熱が残っている気がする。先日行われたフジロックの原型になったイギリスのフェスティバルのドキュメンタリー。さまざまなアーティストのライブあり、運営する側、観客、更にはトラ…

井土紀州『ラザロ』(2007)@ポレポレ東中野

68年をテーマにしたドキュメンタリー『LEFT ALONE』で知られる井土紀州の新作。今回は3部からなる3時間20分の大作劇映画。テーマはグローバリゼーションといささか重いが、「インディペンデント・プログラムピクチャー」というキャッチコピーはあながち間違…

アキ・カウリスマキ『街のあかり』(2006)@ユーロスペース

男が女に出会って騙されて多くのものを失う、ただそれだけの話。ストーリーは予告を一度見るだけで大体の予想はついてしまう程度のもので、男は周りから言われるとおりに「負け犬」であったし、喧嘩には勝てないし仕返しもまともにできない。 しかしそれでも…

ロバート・アルトマン『ウエディング』(1978)@渋谷東急

最高傑作の呼び声高い『ナッシュビル』を見逃しているので、さらに倍の人数で挑んだこの作品が、群像劇として更なる成功を生んでいるのかはわからない。最後まで登場人物の正確な関係図を頭に思い描くことができなかったのは確かではあるが。それでも、あら…

清水宏『蜂の巣の子供たち』(1948)@シネマヴェーラ渋谷

恥ずかしながら清水宏の映画は今回の特集上映で初めて観た。チラシを観たとところこの『蜂の巣の子供たち』は「傑作」と表記されてあったので並々ならぬ期待を抱きながらスクリーンに注目した。一番初めに「この映画に出演している子供を知っている人はいま…

中村義洋『アヒルと鴨のコインロッカー』(2007)@恵比寿ガーデンシネマ

僕は伊坂幸太郎の本は一冊も読んでない。この日本人と外国人の関係を軸にした物語が伊坂幸太郎の常連テーマであるのかどうかはわからない。そういうテーマの問題はさておき映画だけを観てみると、なかなか興味深い構造をしている。まず、様々な形での逆転の…

吉田大八『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(2007)@シネマライズ

戯曲が原作ということもあるのだろうか。演劇的というか、最近の日本映画にはないような長回し、アクションをワンカットで見せる手法が目立っていた気がした。それは、溝口健二の映画を思い出させるというのは、やや大げさかもしれないが、少なくとも僕にと…

フランソワ・トリュフォー『隣の女』(1981)@シネマヴェーラ渋谷

新発見や感慨を新たにする機会の多かったトリュフォー特集の最終日。もはやさらりと語ってしまうこともできたであろう題材をねばり強く物語り、結果として俳優の身体性が際だって前景化するメロドラマに。とはいえ、ここにはジャン=ピエール・レオーのよう…

吉田大八『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(2007)@シネマライズ

原作本谷有希子、主題歌チャットモンチーという事前の情報につられて思わず観に行ってしまう。ほぼ満員の場内からは節々で笑いが起き、確かに僕も顔が綻んでしまったが、最近増えている映像効果を駆使して極端で大げさなイメージを作り出している作品という…

フランソワ・トリュフォー『夜霧の恋人たち』(1968)@シネマヴェーラ渋谷

ドワネルの思いを乗せた手紙が、各所のパイプを伝って、愛する靴屋の奥さんのところまで届けられるシーンに胸が高鳴る。奇術師の男、最後に思いを告げるストーカー男の愛に狂う様は切ないものだった。(長汐)

レン・ワイズマン『ダイ・ハード4.0』(2007)@ワーナーマイカルシネマズみなとみらい

これは最高だ。理屈抜きに面白い。特に日曜洋画劇場を観ながら育った人間にとってこれほど嬉しい新作は久しぶりだろう。最近はこういったドンパチアクションが90年代に比べて格段に減ってしまった。シュワルツネッガー、スタローン、セガール、ヴァンダム、…

クリス・ミラー『シュレック3』(2007)@ワーナーマイカルシネマズみなとみらい

バイトの特権として無料で映画が観れるので『ダイ・ハード4』のついでに鑑賞。前二作も観ているのだが、このシリーズ三作目が他に比べて格別劣っているとは思わない。しかし、なぜだろう。映画にのめり込むことができなかった。それはこの『シュレック3』…

小原真史『カメラになった男 写真家・中平卓馬』(2003)@シネマアートン下北沢

まずドキュメンタリー映画として非常に優れていると感じた。監督自らが回すカメラは時折少しだけぶれつつもしっかりと「中平卓馬」という対象、あるいは彼が見ているものを捉え続ける。それぐらい、「中平卓馬」という人物の一挙手一投足が僕らを惹きつける…

フランソワ・トリュフォー『柔らかい肌』(1964)@シネマヴェーラ渋谷

まず、はじめに書いておくがこの映画は面白かった。面白かったという事を前提にして文章を進めさせていただくが、どうも僕はこういった不倫劇、大人の恋愛、はたまたメロドラマといったものが苦手らしい(ケーリー・グラント主演の『めぐり合い』を観たとき…

アキ・カウリスマキ『浮雲』(1996)@ユーロスペース

こちらの映画は《敗者三部作》の第一作などと呼ばれているらしい。確かにここに描かれているの「敗者」であって、そこまで悪い事ばかり起こさなくてもいいじゃないか…と観ているこっちが思ってしまうほど、主人公の夫婦は転落していく。しかし、この映画の背…