映画

アキ・カウリスマキ『真夜中の虹』(1988)@ユーロスペース

現在ユーロスペースで行われている特集上映「カウリスマキの灯り」の一つとして鑑賞。この特集以前にカウリスマキの作品を一つも観ていなかったのだが、これは個人的にかなり好きになってしまいそうな作家だ。 この『真夜中の虹』は《労働者三部作》と呼ばれ…

マキノ雅弘『若き日の次郎長 東海一の若親分』(1961)@浅草名画座

足を運ぶのは初めての浅草名画座で、初めて次郎長ものを観る。なんといっても驚きなのは90分の時間をフルに活用したメリハリのある展開で、清水の次郎長はとことん魅力的だし、渥美清がでてくるところなどは笑いが止まらなくなる。プログラム・ピクチャーの…

藤原敏史『映画は生きものの記録である 土本典昭の仕事』(2006)@ユーロスペース

必ずしも土本典昭の全仕事を回顧しているわけではなく、やはり中心となっているのは水俣病についての作品群である。とはいえ、現在78歳の土本典昭自身の発言がたっぷり盛り込まれたこのような企画はなんと言っても貴重だ。また、歳を積み重ねてなお精悍さを…

青山真治『すべては老いた彼女のすべてについては語らぬために』@ユーロスペース

残念ながらこの作品について語る言葉を僕は持ち合わせていない。家に帰って調べようとしたが内容に関する詳細はまったく出てこないし、夏目漱石にしても菅野スガにしても僕は知らなすぎる。小説家・青山真治らしい作品というか、小説家としての彼の側面が強…

フランソワ・トリュフォー『柔らかい肌』(1964)@シネマヴェーラ渋谷

フランソワーズ・ドルレアックの美しさは言わずもがなだが、ジャン・ドゥサイの明朗な声と裏腹の曖昧な表情が思いがけず素晴らしい。しかしそれ以上に素晴らしいのは、リスボンのホテルやランスの劇場のシーンで見られる物言わぬ恋人たちが交わす危うげな視…

ペドロ・アルモドバル『ボルベール』(2006)@科学技術館

ペネロペ・クルスはその整った容姿とは裏腹にあまりパッとしない役ばかりと思っていたのだが、この映画ではまったくそんなことはなく、むしろ思い返せば彼女ばかりに視線がいってしまっていたような気がする。男の存在が排除された世界で、さらりと笑いも織…

中村義洋『アヒルと鴨のコインロッカー』(2006)@恵比寿ガーデンシネマ

伊坂幸太郎原作、仙台にてオールロケという2点は確かに公開二日目に観に行く要因にはなったが、前評判通り内容も見過ごせないものだった。伊坂小説の映画化はこれまでもこれからも何度も試みられていて、必ずしも成功しているわけではなさそうだが、今回に…

オタール・イオセリアーニ『歌うつぐみがおりました』(1970)@新文芸座

グルジア時代の作品はなかなか観れないのではと思っていたのでかなり気合いをいれて観た。ダメな奴だがやっぱり憎めないという主人公の男にものすごく好感を持っていただけに、『気狂いピエロ』並みの衝撃のラストによってかなり動揺させられる。(高木)

オタール・イオセリアーニ『月曜日に乾杯!』(2002)@新文芸座

『素敵な歌と舟はゆく』の感動のおかげで一睡もせずに観ることができた。田舎とかヴェニスの名所とかをとても美しく撮っている一方で、遠くに見える作業クレーンや工場もちゃんと映しているのは良かった。キャストも個性的な人達を集めていて、ときどき意外…

松本人志『大日本人』(2007)@横浜シネマリン

こんな映画に出会った日には全てが憎悪の対象になってしまうからどうしようもない。ドキュメンタリー的演出、日本文化特有の特撮物の影響、ヒーローの存在意義、生活の場となる家と戦いの舞台となる都市、テレビのバラエティー番組的演出、吉本芸人(かと思…

『それでも生きる子供たちへ』(2005)@シネマライズ

7人の監督によるオムニバス映画。上映時間の長さは気になるものの、テーマとしては嗜好にピッタリなので当然観に行く。結果的には7本のうちカティア・ルンドとエミール・クストリッツァの2本は、短編の特性を活かして子どもたちの日常を淡々と、悲痛にな…

神代辰巳『恋人たちは濡れた』(1973)@シネマヴェーラ

先日の『赤線玉の井〜』がかなり印象的だったので、時間的に無理をして神代辰巳の作品に足を運ぶ。故郷に帰省したにも関わらず、別人を装う主人公。その主人公がフィルム運びの仕事をしているのが興味深い。フィルムという過去を焼き付けたものを過去を捨て…

ザック・スタナー『300』(2007)@相鉄ムービル

ゼミの課題のため、ゴダール漬けになっていた僕は、麻疹休講の決定をいいことにすかさずハリウッド娯楽大作に足を運ぶ。それがこの『300』だ。今更物語を説明するまでもないと思うが、スパルタ教育で有名なスパルタの兵士300人が100万人のペルシア軍に戦…

曽根中生『わたしのSEX白書 絶頂度』(1976)@シネマヴェーラ

ただの採血係の女が娼婦の仕事にのめりこんでいくまでの人間描写がとてもいい。どっかの社長と運転手とのぬれ場は完全にギャグにしか見えなかったのでひたすらクスクスと笑ってしまった。役者たちが全員印象的な顔立ちとキャラクターをしていたのもよかった。…

田中登『実録阿部定』(1975)@シネマヴェーラ

ラピュタ阿佐ヶ谷の田中登特集では結局『人妻集団〜』しか観なかったのでここぞとばかりに足を運ぶ。映画の大部分は狭い畳の部屋での描写になるのだが、田中登の演出が随所に冴えていたこともあり、その異質な空間のイメージが観終わったあとも目に焼きつい…

アモス・ギタイ『フィールド・ダイアリー』(1982)@アテネフランセ文化センター

断続的に挿入される流れていく景色を淡々と映し出すカットが、あまりにも長い時の流れというものを暗示しているような気がした。イスラエルとパレスチナ両者の関係に対して希望を抱き、明るい未来を口にする25年前の人々を2007年に観た僕は、彼らの無垢な笑…

北野武『監督・ばんざい!』(2007)@109シネマズMM横浜

いつもは人の少ない映画館の方が気が楽でいいのだが、この映画に限ってはいったい観客の多くがどういった反応を示すのか知りたかったので、レイトショーで観たのは失敗だった。それに少人数だと気兼ねなく笑うことができないのも惜しい。そういうわけで真剣…

神代辰巳『赤線玉の井 ぬけられます』(1974)@シネマヴェーラ

直前に観た『エロスは甘き香り』とは違った驚きを冒頭のシーンで受けることになった。神代辰巳のロマンポルノは凄いという噂は聞いていたが、なるほど、これは確かに凄い。冒頭の予想外の長回しに始まり、終始、まるでドキュメンタリーであるかのように生々…

藤田敏八『エロスは甘き香り』(1973)@シネマヴェーラ

米軍基地の近くと思われる寂れた郊外の町をロングショットで捉えた冒頭に思わず胸が躍る。いいのか悪いのかわからないが、最近はそこに街が映っているだけで感動してしまう。舞台となるこの米軍人が昔使っていた宿舎(?)はかなり魅力的で、それ自体が当時の時…

ソン・イルゴン 『マジシャンズ』(2005)@池袋シネマ・ロサ

この映画は95分間ワンカットである。つまりずっと95分間とりっぱなしなのだ。なんて無謀なんだ。映画を見ていても、どこかのシーンで役者がほくそ笑んだり、カメラマンの影とかうつっちゃったりしてないかなんてことをついつい探してしまう。しかしやはりプ…

タナダユキ『赤い文化住宅の初子』(2007)@シネアミューズ

それこそ「赤毛のアン」のような主人公の初子の妄想を映像化するところが幾分中途半端に思え、その割には最後の最後まで「赤毛のアン」の人生をなぞったままハッピーエンドを迎えたのが気になった。しかし、脇役の人物たちが醸し出すおかしな空気のなかで凛…

クシシュトフ・キェシロフスキ『アマチュア』(1979)@アテネフランセ文化センター

軟弱そうなオジサンが8ミリカメラを使って映画を撮っていくという映画。寝不足気味だから途中で居眠りしてしまうだろうと思ってたけど、内容が自分にとってかなりショッキングなものだったので二時間近くスクリーンに釘付けになった。映画が進むにつれ、あの…

金子修介『右能鴻一郎の濡れて打つ』(1984)@シネマヴェーラ

エースをねらえのパロディでとことんバカらしく面白い。お蝶婦人ならぬお蝶様に勝つシーンはまさに圧巻!こんなにおもしろいスポ根を見たことがない。(上西)

神代辰巳『赤線玉の井 ぬけられます』(1974)@シネマヴェーラ

三人の女の話。いろいろな特徴があり、それぞれに面白いのだが、一番面白いのは火鉢で股を温めるシーンだった。(上西)

澤田幸弘『暴行!』(1976)@シネマヴェーラ

初ロマンポルノだった。まったくロマンポルノの歴史などはしらないが、かなり描写がリアルで驚いた。この映画でラジオから流れてくる音楽はかっこいい。(上西)

北野武『監督ばんさい』(1984)@109シネマズMM横浜

北野武が『その男凶暴につき』でデビューした時には、当時の映画界に激震が走ったらしいが、もちろん僕はそんな現場をリアルタイムで知りはしない。それどころか、ロードショーで北野武を観たのは初めてだ。スクリーンで観るキタノフィルム・・・。一体なに…

松本人志『大日本人』(2007)@ワーナーマイカル新百合ヶ丘

松ちゃんが映画を撮ると聞いたら期待せずにはいられない。内村がメガホンを取るのとはわけが違う。しかし、映画を見終わって三時間ほどたった今も正直すっきりしないままだ。 けっして面白くなかったわけではないのだが、別に上映中に笑いがこらえられなかっ…

東京藝術大学映像研究科『新訳・今昔物語』@ユーロスペース

映画を志す学生ならば注目しないわけにはいかない、東京藝術大学映像研究学科のオムニバス作品。さすが、全国の学生の中から選びぬかれ、黒沢清らの下で映画を学んでいるだけあり、どの作品ももはや学生映画、自主制作映画というジャンルとして見下されるレ…

オタール・イオセリアーニ『田園詩』(1976)@アテネフランセ文化センター

田園が広がる村は二度大雨に襲われるが、時間が経てばいずれ嵐は過ぎ去り、心地良い晴れ間を取り戻す。同じようにしばらくの間村に滞在していた室内楽団の面々も、やがては村を去っていかなければならない。イオセリアーニの絶妙なタッチは、たったそれだけ…

セルゲイ・パラジャーノフ『ざくろの色』(1971)@アテネフランセ文化センター

何かとんでもない映画を観てしまったような気がする。あまりの衝撃でスクリーンの中で起こってることを頭をフル回転させて考えていたが、途中からそれが馬鹿らしくなってきたのであとはひたすら観ることに専念。これがアテネフランセ名物、映画の授業・現代…