井口奈巳『人のセックスを笑うな』@シネセゾン渋谷

『犬猫』を見て以来ひそかにファンになっていた井口奈巳監督最新作をようやく観た。ようやくというのは、この映画の異常な混雑状況にも起因するのであって、本当にこの映画はお客が入っている(僕が観たのは公開から一週間ぐらいたった月曜日であったのに最終回まで完売していた。同じ映画館で公開された黒沢清『叫』はえらい違いだ)。こういう満席の映画館はあまり好きではないのだが、そんな事とは関係なくとても幸せな気分に浸りながらこの映画を観ることが出来た。俳優たちを優しく見つめる『犬猫』と同様の井口監督の視線の前で、俳優たちが生き生きとしている。エアマットを膨らませつつじゃれあう二人の姿や帰宅した永作博美がラジオから流れるポップソングを口ずさみながらさりげない時間を過ごしているところなど、一つ一つのシーンが本当に素晴らしい。生き生きとした俳優(それも美男美女)、しかもそこに魅力的な歌が流れてきたら映画はもうほとんど成功なのだ。
ところで、梅本洋一氏は松山ケンイチ演じる「みるめくん」と同一化したとnobodyにて語っていたが、僕が同一化したのは忍成修吾演じる「堂本くん」だった。人妻とセックスすることは出来なくても片想いの女の子に突然キスするぐらいはしてみたいものだ。

ところで僕の周りには自主映画を作っている学生が多いのにどうしてこういう幸せな映画を作っている学生がいないのだろう?(田村)