クリスティナ・リッチが豚鼻の女の子を演じる。彼女の大ファンとしてはなんとも気が乗らない映画ではあったが、そこはファンの宿命、いそいそと映画館に駆けつけてしまう。この手の映画は過去に多く作られていて(最近だとファレリー兄弟の『愛しのローズマリ…
久々に426クロニクルに書いてみようと思う。好き嫌いの主観的な判断は差し引いて、見たほうがいい(かも)と思える映画を紹介してみようかと。 * * *映画が「反転」するとはどういうことだろう。 物理的な方法としては、画面の上下が逆さに入れ替わることも…
『犬猫』を見て以来ひそかにファンになっていた井口奈巳監督最新作をようやく観た。ようやくというのは、この映画の異常な混雑状況にも起因するのであって、本当にこの映画はお客が入っている(僕が観たのは公開から一週間ぐらいたった月曜日であったのに最終…
【映画】 1 『サッド・ヴァケイション』青山真治 「僕たちが今いる場所なんて、人生単位で言ったらぬるま湯みたいなところだ。さっさと僕たちも「間宮運送」の人たちのように、「人生」を歩まなければいけない。 青山さん、すごい映画を見せてくれてありがと…
著名映画人等の絶賛や、ぴあに取り上げられるなどして話題になっているこの映画。キャッチフレーズは「内向しない日本映画」だそうだ。僕は自分でも常々思っているし他人からもよく「きみは内向的だ」と言われるのだが、いざ「内向」というものを説明しよう…
永田一直が運営するレーベルの一周年記念イベント。今回出演したほとんどのアーティストたちにとって、2007年は転機になる年であっただろう。CHERRYBOY FUNCTIONはついにファーストアルバムをリリースしたし、ELEKTRO HUMANGELやCROSSBREDもそれぞれプレスさ…
ロメロの『ゾンビ』のリメイクである『ドーン・オブ・ザ・デッド』の脚本家が初監督して作られたのがこの『スリザー』だ。アメリカのとある田舎町になんの前触れもなく飛来してきた謎の物体Xによって、ヒロインの亭主はエイリアンに変貌してしまう。そして…
2001年の9月11日のアメリカ、ニューヨークでなにが起こったかは今更記述するまでもないだろうが、実はその数日前、隣国カナダ、トロントにてその事件に酷似したシーンが存在する映画が上映されていた。黒沢清の『回路』である。映画終盤、飛行機が建物に突っ…
まだ僕が中学生ぐらいだったころに「リドリー・スコット監督、シュワルツネッガー主演でSF映画が撮られる予定」という情報が出回っていたことがあった。当時の僕は『ブレードランナー』によってリドリー・スコット信者となっており、この小さな情報に狂喜し…
今のゆら帝のライブは一度は行ってみた方が絶対にいい。本気でお勧めします。 最近の「空洞です」以降のゆら帝の方向性は確かに無邪気な称賛を浴びることをバンド自身が猛烈に拒絶しているようにも見えるし、非常に掴み所も落とし所も見えにくいテーマに対峙…
七尾旅人という超個人的なシンガーソングライターの肉体と精神より滲み、溢れ、垂れ流された幻覚にも似た四時間半にも及ぶ歌・ウタ・うたの海、それは『歌の必然的な連鎖』と呼ぶべきか。しかし、その歌の生まれる現場には、彼のライフワーク的なこの自主イ…
おそらく冨永昌敬にとって物語を完璧な形で映画に昇華させることなど、何の意味もないのだろう。そんな信条をもった人間が、それでもどうにか物語を語ろうとする格闘の様子がどのシーンからも伝わってくる。それは時に痛ましく思えてしまうことさえあるが、…
僕もリンチのファンだっただけに最新作『インランド・エンパイア』(06)には、本当に幻滅した。どうせならこんな駄作を撮らずに死んでくれたほうがマシだった、とファンとしてあるまじき不謹慎な考えすら浮かんでしまうほどだ。しかし、一方でリンチのよう…
住宅街へと続く階段をのぼる男はぐったりと頭を垂らし、ジーンズのポケットからは金槌の柄が飛び出している。男はこれから人を殺しにいくのだ。人を殺すことに理由がある必要はない。しかし、男には人を殺す必要があったのだ。 黙秘をつづけ死刑宣告を待つ坂…
下半身の自由が利かない夫を持つチャタレー夫人の、息がつまりそうな日常生活。どれよりも優先してまず書いておきたいのは、序盤に映し出されるそういった何気ない描写がゆっくりとこの作品の映画的土壌を形成していくのを、自分の背筋にくる震えと共に確か…
仙台発、地元を中心に数々のイベントに出演し、徐々に活躍の場を広げていっているパフォーマンス集団(HPにはTechnodelic Comedyとある)。その新作ライブ。映像と自らの身体を巧みに交錯させた最初のシークエンスを観て、正直やられた!と思ってしまった…
「Mala Noche」の意味はスペイン語で「最悪の夜」。しかし何とも寝苦しい8月の東京の夜々に、このすばらしい作品が毎晩上映されているというのはちょっと素敵なことではないだろうか。ガス・ヴァン・サントのこの処女長編には確かに彼の後の作品に通じる要素…
執拗なまでに描かれる細部が、連想ゲームのように脱線に次ぐ脱線を繰り返し、ただ理由のない恐怖心だけを駆り立てていく。その恐怖が「絶望」に裏打ちされているのは、作中、中原昌也自身によって悲痛なまでに語られている。「中原昌也の次の動向に期待!」…
我が母校のOBである大江健三郎を読むのははじめてであった。授業で大里さんが言っていたように性器のことをセクスと書いていたのはとても興味深く面白かった。すごく読みやすく分かりやすかったが、描かれているものはとてもリアルな閉塞感でありどこかとて…
なんてキレイな表現たちなのだろう。初めて読んでからかなり時間がたっていたせいかとても新鮮であった。日本語独特の色彩表現がつかわれ、宮沢賢治が夢見ていたであろう銀河の息遣いが聞こえる。さあ耳を澄まして読んでみよう。(上西)
周りの人物に対して道化を演じて、本当の自分の存在に気づかれるということに怯えている。これは多くの人がそうなのではないか。そして多くの人はそのことにさえ気づいていないのではないか。重要なことに気づかせてくれる本であった。(上西)
最年少ヘッドライナーであり、今イギリスでもっとも勢いがあるバンドだろう。転換が終わるやいなや人が流れ込んできてただならぬ雰囲気が流れていた。そしていざライブが始まってみるとモッシュの嵐だった。最高にかっこいい曲を淡々と演奏してゆく姿がとて…
今まで出しているアルバムはどちらも好きだったので期待大だったが、その期待を大きく裏切るすばらしいライブだった。曲が始まるたびに歓声が起こり大合唱がはじまる。そしてなんといってもバンド自体がかっこいい。ギターを弾く姿、歌う姿、どれも見ていて…
まだまだ日が沈まないなか、汗が滝のように流れ、ギターの轟音が聞こえる。演奏しているアーティストが一番気持ちよさそうでうらやましかった。ライブ終盤に旗が振られそれに答えている姿はなんだかとてもうれしそうに見えた。(上西)
太田光からも大絶賛を受ける本作が古川日出男の最高傑作かどうかはわからないが、彼がいわゆるネクストレベルに突入したというか、新しいシーズンへ移行したことを高らかに宣言する作品であることはまず間違いないだろう。近作にもその兆候は見て取れたのだ…
上映時間がちと長い……でもその分この映画には季節があるし、主人公にとって愛おしくてたまらない時間の流れというものが確かに描かれている。そしてたとえば『腑抜けども〜』のように田舎で生きることの息苦しさを暴く作品がある一方で、この作品における田…
かっこいいおしゃれな音楽をやっているバンドには少し抵抗があるのだが、このバンドはまったくいやみを感じなかった。ゆるく柔らかい音楽を聴いていると、とても心地よい気持ちになってきて、周りの空気が変わっていくのを感じた。単純にかっこよかったのだ…
僕はまったくDE DE MOUSE の人気を知らなかったのでまずは人気ぶりに驚かされる。MCでしゃべるたびに盛り上がる客、前の客の踊りが激しくなっている。めちゃくちゃ汗をかいているおっさんが前で踊り狂っていたのでくさかったが、どことなくインド風の声が響…
一番手で出てきて何も言わずにギターを弾き始める。リフがループを繰り返していくうちに少しずつ付け加えられていく音が曲の表情を変えていき、最終的にいくつもの音が重ねられ完成する。そうか、つまり曲の表情を作り上げてゆく過程を見せられていたのか。(…
前回見たときと同じMCが今回もあったので今回は間違えずに「最後は金」といえた。作りこまれた演出が僕たちを楽しませ、その演出の隙間に見える音楽(ヒップホップ)に対する真剣さが、僕たちを二人が作り上げたライブに溶け込ませていく。とても満足のいく…