2007-05-01から1ヶ月間の記事一覧

F・W・ムルナウ『サンライズ』(1927)@アテネフランセ文化センター

女の夫に対する疑心暗鬼の念は相当なものであった。一緒に旅行に出掛けても夫を信じることができない女の表情はまるで人形のようで、もう少し時代が進んでいたらとっくに精神病として描かれているところだ。その疑心暗鬼の念はわれわれにも伝播して悪い予感…

廣末哲万『14歳』(2006)@ユーロスペース

僕にはこの作品を早めに観ておきたかった理由が二つあって、一つは前作『ある朝スウプは』を観て以来、廣末哲万と高橋泉による映像ユニット「群青いろ」に注目していたから。もう一つは中学生ぐらいの少年少女を軸に描かれる映画にはちょっとした思い入れが…

マーク・フォースター『主人公は僕だった』(2007)TOHOシネマズららぽーと横浜

ららぽーとに行ったついでに鑑賞。実は悲劇小説の主人公だったという男が主人公の喜劇映画で、自分が死んでしまわないように奮闘する話。こういうちょっと機転をきかせた設定の映画はほかにもジョン・カーペンターの『マウス・オブ・マッドネス』とか『レデ…

ジャマイカフェスティバル@代々木公園特設ステージ

ジャマイカとの国交樹立を記念して毎年行われているイベントで、今回が三回目だった。原宿駅から代々木公園に近付いてくると、小さくレゲエのリズムが聞こえてきて、緑黄黒や緑黄赤をまとったピースフルな人々があふれかえっている。出店はジャマイカ料理か…

アキ・カウリスマキ『ラヴィ・ド・ボエーム』(1992)@新文芸坐

白黒の画面だと、あの色合いが出せないので、もったいないのではないかと心配していたが、全然悪くはなかった。パリで芸術を志す三人と、どこか『巴里のアメリカ人』のような設定だが、この作品には明らかに過去の作品へのオマージュかノスタルジーが感じら…

アキ・カウリスマキ『コントラクト・キラー』(1990)@新文芸坐

『コントラクト・キラー』は前に一度見ていたので、最悪寝てもいいかと思っていたが、ついつい最後まで見てしまった。これはやっぱりすごくいい。何といっても、ジャン=ピエール・レオーはもちろん、主演の三人がめちゃくちゃいいのだ。(松下)

アキ・カウリスマキ『マッチ工場の少女』(1990)@新文芸坐

『罪と罰』を見たときにも思ったが、カウリスマキはユーモラスな映画より、こういったストイックな映画の方が数段素晴らしい。抑制された表情と動きが、重厚な色彩とあいまって独特の緊迫感が張り詰めている。音楽とも実にマッチしている。(松下)

アキ・カウリスマキ『レニングラード・カーボーイズ・ゴー・アメリカ』(1989)@新文芸坐

周囲の観客は、この映画のオフビートなギャグに爆笑していたが、僕はカウリスマキのこの手のユーモアにはさっぱり笑えない。しかも、この映画はいつもに増してふざけすぎている。それでも、この映画を悪く言えないのは、音楽の勝利、ロードムーヴィーの勝利…

キング・ヴィダー『群衆』(1928)@アテネフランセ文化センター

映画を観ていて、その映画の登場人物の状況や物語の舞台となっている土地と自分とが関係していると、なんとなく幸せな気分になったりし、「ああ、これが映画だ」などとおこがましくも思ってしまったりするものだが、この「群集」に関してはあまりに今の自分…

CLUB SNOOZER@代官山UNIT

あんなに汗だくになり、あんなに疲れて爽快なイベントは初めてだった。それはズボンズのライブもすばらしかったし、タナソウさんが選ぶ選曲がすばらしかったからだ。こんなイベントに参加するとやはりいつもと違うロックの聞き方ができ、とても新鮮だった。(…

ベンエーグ・ラッタナルアーン『インビジブル・ウエーブ』(2006)@科学技術館

複雑に絡まっていることが映画を見ていくとだんだん解かれていく。日常であったら平然としていられないような出来事が淡々と描かれていく。そして登場人物はみな結末を知っていてそれに向かっているだけの様に思える。虚無感に包まれてはいるがどこかすこし…

キング・ヴィダー『群衆』(1928)@アテネフランセ文化センター

大物になるとニューヨークへ上京したはいいが、都会の群衆に埋もれてしまうというストーリーを見て、主人公ジョニー・シムズは俺だ!と思い込むのも無理はないと思うが、あまり変な勘違いはしないほうがいい。類似している点はあるかもしれないが、決定的で…

キング・ヴィダー『涙の船唄』(1920)@アテネフランセ文化センター

河を下る舟での生活に、ミシェル・シモン的な放浪者も登場して、どうしてもヴィゴ=ルノワールの源流に思えてしまうこの作品。そういったのどかな自然描写も素晴らしいが、何といっても見所は、幼い孤児のバッディと里子に出されていた妹スージーの感動の再…

CLUB SNOOZER@代官山UNIT

正直ボクもどれほど盛り上がれるものなのか疑っていた部分もあったが、クラブなのになぜかモッシュが起こりまくるという言ってみればセオリーを逸脱した雰囲気にすぐに慣れることができた。体力面も含めてピークはやはりズボンズのライブとその前後のロック…

ヘンリー・キング『乗合馬車』(1922)@アテネフランセ文化センター

ハリウッドの大ベテラン、ヘンリー・キングの最高傑作と噂されるこの作品。いわゆるスモールタウンもので、近所に住む“異常性格者”に主人公一家が酷い目にあうのだが、この“異常性格者”が本当に異常で、なぜこんなに悪い奴なのかまったくわからない。まるで…

相米慎二『お引越し』(1993)@シネマアートン下北沢

主演の田畑智子も素晴らしかったし、そのクラスメートたちも素晴らしい演技ならざる演技をみせてくれる。引越し先の中井貴一のマンションから街を見渡すと、四方を山に囲まれていてここが京都だとすぐわかる。でも、やはりこれ以前の相米に比べれば見劣りす…

佐々木匡士+山本達久+田畑満@高円寺円盤

壮絶だった。本物だと思った。サポートのV∞REDOMS、AMAZON SALIVAなどで活動する田畑、実力派ノイズドラマーの山本、両氏のタイトで繊細かつ即興的な演奏もさることながら、やはりアシッドフォークの怪人・佐々木匡士は圧巻としかいいようがなかった。激しく…

ヴィクター・フレミング『暗雲晴れて』(1919)@アテネフランセ文化センター

『オズの魔法使い』『風と共に去りぬ』のヴィクター・フレミングということで内心あまり期待もしていなかったのだが、これが本当に凄かった。スラップスティック仕立ての愛のおとぎ話なのだが、クライマックスで列車を飲み込みすべてを水没させた洪水シーン…

三島由紀夫『金閣寺』(1956)

主人公の前に幾度となく立ちはだかる金閣。主人公は金閣のために苦悩し、金閣の美に取り付かれ、そして金閣の幻想と心中する。いったん読み始めると止められなくなる魔力を持っているこの作品と出会えて本当によかったと思う。そして50年経っても色あせない…

村上 龍『限りなく透明に近いブルー』(1978)

恥ずかしながら僕は初めて村上龍の作品を読んだ。はじめに読む作品にふさわしいかどうかはわからないが、僕は読んだ後に疑問を抱かずにはいられなかった。それはやはり物語の中の事柄が何一つリアルに伝わってこなかったからだ。(上西)

The Jelly Fish『Spilt Milk』(1993)

こんなにポップでひねりの利いたメロディーは天才でしか生み出せないのであろう。そして同時にすごくひねくれ者たちが生み出したもののように思える。僕はこんなにすばらしいメロディーを生み出すことができるバンドに憧れ、同時に悔しくもある。(上西)

The Buzzcocks『Single Going Steady』(2001)

僕はベスト版をあまり買わない。やはり作品をアルバム単位で聞きたいからだ。しかし今回はベスト盤を買ってしまった。それはやはりこのアルバムが僕をよんでいたからだろう。そしてその呼びかけに答えてしまった僕はやはりこのアルバムの虜になってしまった…

The Flaming Lips『Soft Bulletin』(1999)

公式ドキュメンタリー『Fearless Freaks』をみてから虜になり、すぐ買いにいった。そうThe Flaming Lipsssss!今僕の頭の中にリピート再生されている『Race For The Prize』を多くの人に聞いてもらいたい。やさしいメロディーに僕は今後何度も励まされるだろ…

D・W・グリフィス『スージーの真心』(1918)アテネ・フランセ文化センター

「映画の父」グリフィスの作品ということでかなり気合をいれて鑑賞。90年前に撮られたこの映画の中にいるリリアン・ギッシュの表情の豊かさには心打たれるものがある。田舎と都会の対立をさりげなく盛り込んでいるのもまた感動的。ここぞというところで使わ…

ダグラス・サーク『サーク・オン・サーク』(2006)@INFASパブリケーションズ

ダグラス・サークのインタビュー本。先日の『必ず明日はある(原題:There's Always Tommorrow)』の興奮が冷めないうちに読む。大部分はサークが自身の作品について語るというものだが、時折話題にのぼるサーク自身の人生の遍歴に胸が張り裂ける思いがする…

松岡錠司『東京タワー』(2007)@渋谷シネパレス

福山のエンディングテーマソング。大観衆の嗚咽とすすり泣く声。上映後の館内は幸福な音と空気が包んでいた。……僕を除いて。映画としてはきちんと作られていたし、小林薫を始め俳優やスタッフがこの映画に誠実に取り組んでいるのも伝わってきた。いい映画だ…

リリー・フランキー『東京タワー』(2005)@扶桑社

「今en-taxiって同人の文芸誌で初めてオナニーした時とかのくだらないエッセイを書いててさ……うんぬん」僕にこの大ベストセラー小説『東京タワー』を初めて読むきっかけを与えたのは、著者がパーソナリティを務めていたラジオ番組の自慰特集の回だった。『東…

ライアン・ジョンソン『BRICK』(2005)@渋谷シネ・アミューズ

一言でいうなら「ハードボイルド高校白書」。なんか日本の少年マンガ(マガジン系?)とかにあるような気がしますが。もう現代でハードボイルドやるには高校しかないのか?(宮本)

椹木野衣『日本・現代・美術』(1998)@新潮社

自分の文盲っぷりを改善すべく読んだ本。読むのが疲れる。とりあえず本筋は「世界史という舞台の脇役=極東でしかない日本に『正しい前衛』なんか存在しえない!なぜなら・・・」って感じだと思う(あってるよね?)。いや、確かにそうだとは思う。だけど僕…

エルンスト・ルビッチ『陽気な巴里っ子』(1926)@アテネ・フランセ文化センター

いまから80年も前に作られたサイレント映画にもかかわらず、ルビッチの映画はまったく考古学的な視線を抜きにして腹を抱えて笑ってしまう。アテネ・フランセに集う、普段あまり笑わないだろう気難しい人たちですら、ルビッチを前にしては笑いを堪えきれない…